外科室:
「外科室についての散文」
診察台に横たわるやすらかな顔と、病んだ胴体
ゆきわたる透明な液体
わたしが顔を寄せると 幽かになにかを呟いて
それから、それから、
きみが目覚めることは二度となかった
なにかの責任を だれかに押し付ける
年をとった子供たち
赦しの乞食
赦しの乞食たち
神様になったわたし
神様になったわたしたち
心は揺れるけど
けして振り子のようには同じ軌道をなぞれなくて
ただ転り続ける
わたしの知らないところまで
*
乳歯が抜け落ちたとき
はじめて死を感じた
ずっとずっと幼いとき
わたしがなくなるのを感じた
歯は、最後までなにも言わずに
手のひらで横たわっていた
あれはあなただった
棒にかかった布きれが風でとばされていくみたいに
どこか高いところへ あるいは泥濘にまみれて
わたしも動かなくなるのでしょうか
*
これからは
簡単に壊れるものだけを愛しましょう
こわがらなくて済むから
神様は
高いところじゃなくて
ずっと深いところに住んでいる
海の、沼の、泥の、くらやみの、底。
そこで死にかけてる。
わたしが味わう感情はひとつでいい
たったひとつ あればいいよ
こわいから
Published on April 14, 2017 23:54