外科室

外科室:

「外科室についての散文」

 
 
 
診察台に横たわるやすらかな顔と、病んだ胴体
ゆきわたる透明な液体
わたしが顔を寄せると 幽かになにかを呟いて
それから、それから、
きみが目覚めることは二度となかった
 
なにかの責任を だれかに押し付ける
年をとった子供たち
 
赦しの乞食
赦しの乞食たち
神様になったわたし
神様になったわたしたち
 
心は揺れるけど
けして振り子のようには同じ軌道をなぞれなくて
ただ転り続ける
わたしの知らないところまで
 

 
乳歯が抜け落ちたとき
はじめて死を感じた
ずっとずっと幼いとき
わたしがなくなるのを感じた
 
歯は、最後までなにも言わずに
手のひらで横たわっていた
あれはあなただった
 
棒にかかった布きれが風でとばされていくみたいに
どこか高いところへ あるいは泥濘にまみれて
わたしも動かなくなるのでしょうか
 

 
これからは
簡単に壊れるものだけを愛しましょう
こわがらなくて済むから
 
神様は
高いところじゃなくて
ずっと深いところに住んでいる
海の、沼の、泥の、くらやみの、底。
そこで死にかけてる。
 
 
わたしが味わう感情はひとつでいい
たったひとつ あればいいよ
こわいから
 
 
 

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Published on April 14, 2017 23:54
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Sui Ishida
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